三谷澄江さん(和裁1級技能士)

    

和裁の基礎を学びながら 親子で受け継ぐ喜び伝えたい

海外からの観光客の急増や、「おもてなし」文化への再認識などから
あらためて着物や和の文化が見直されています。
リビングカルチャー倶楽部 枚方教室でも和裁は人気の講座。
気軽に始められる和裁の楽しさを伝える三谷澄江さんにお話を伺いました。

「手持ちの着物で習える 和裁サロン」 講師 三谷澄江さん
岡山県出身。高校を卒業後、和裁の専門学校に通って国家資格である和裁1級技能士の資格を取得。リビングカルチャー倶楽部での講師のほか、日本和裁士会の会員として、和裁の技術継承にも取り組む

捨てる布がほとんどない和裁の技術

講座ではそれぞれが好きな作品を
作っているので進度はさまざま。
あちこちから質問が飛び交います

 「和裁って、とっても無駄のない技術です」と話すのは、リビングカルチャー倶楽部で講師を務めるかたわら、日本和裁士会会員として和裁技術の継承にも取り組む、三谷澄江さん。反物の幅を切らずに仕立て、長すぎても切らずに縫いこむ和裁は、仕立て直しが可能です。祖母や母親の着物を活用するだけでなく、ゆくゆくは自分の娘にも着てほしいからと、和裁を習いにくる人もいるそう。
 外出時はいつも着物という三谷さん。「よそいきと思ってもらいやすいからかえってラクなんです(笑)」。そんな三谷さんには袴と〝ひっぱり〟が欠かせません。「これを着物の上に着れば、少々汚れても気にならないので、家事もできますし、自転車にも乗ります」。着物で自転車にも乗れるなんて驚きです。
 「着物だと、腰がシャンとして、背筋も伸びます。日本人の体形には、やっぱり和服が合うのかなと思います。そんなことも、若い人に知ってほしいですね」



タンスに眠っている着物をよみがえらせて

捨てる布がほとんどない和裁の技術

 和裁はハードルが高そう…という人は多いのでは。「裁縫が得意でなくても大丈夫。浴衣なら、教室に10回通えばだいたい仕上がります。ご自宅にある古い着物を仕立て直すこともできるようになります」と三谷さん。自分で仕立て直しをした着物でお出かけなんてステキですね。
 「受講生の中には着付けの先生もおられます。この帯はこう結んだら?なんて、着物の着方や選び方で盛り上がることもありますよ」。教室での和気あいあいとした様子が伝わってきます。
 「着物の良さが見直されている今だから、着るだけでなく、作る技術も身につけたいという人が増えたらうれしいですね」



そんな三谷さんが講師になったきっかけとは?

 結婚前まで和裁学校で指導した経験がありましたが、「母や祖母の着物があるけどサイズが合わないので着られない」「自分で直せたらもっと着られるのに」といったお話を伺うことが多かったので、そうした悩みを解決できたら、と思い講座をすることに決めました。



講座の内容はどのようなものですか?

 最初は、浴衣・単衣着物・長襦袢などの単衣のものを、1枚和裁の基礎を学びながら縫っていきます。その後タンスで眠っている着物や、お母さま・お祖母さまから譲り受けた着物のサイズを直したり、着物をコートや羽織、帯に仕立て変えたり、など作りたいものを作っていただけます。もちろん新しい反物から仕立てるのもOK。



講座の一番のアピールポイントは?

 和裁の基礎を学びながら、それぞれ自分のしたいことをして頂けるのが一番の魅力です。楽しくないと続かないので、縫いたいものを縫って楽しんでいただけるようにと、いつも考えながら講座を務めています。
「お裁縫が好き」「着物が好き」「家に着ていない着物がある」「もっと着物でお出かけしたい」と思うことがある人はもちろん、「和裁はしたことがない」という人も大歓迎です。一度教室を見に来てくださって、和裁が、そして着物がもっと身近なものになってほしいです。



和裁の基本は運針
すべて手縫いで仕立てる和裁。まずは〝運針〟という基本の縫い方をマスターするところから始めます。最初は浴衣や長じゅばんなどの単衣(ひとえ)を縫って、次に裏地のある袷(あわせ)などにチャレンジしていきます。

和裁の豆知識「割りを入れる」
着物の布と布との間に、あえてまったく別の布を裁ち入れ、幅広く仕立てることを〝割りを入れる〟といいます。力士の着物や、斬新でオシャレな印象に仕上げたいときにも用いられます。

和裁用語教えます
洗い張り…着物をほどいて反物にして洗い、縫い直ししやすいようにすること
単衣(ひとえ)…浴衣や長じゅばんなど生地が一枚のもの
袷(あわせ)…生地を二枚縫い合わせた裏地のある着物
八掛(はっかけ)…袷の着物の裾の裏につける布。隠れたオシャレにも
引っ張り…着物の上から着る作業着